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青の幽霊(6)

2012年7月上旬 31歳

 乾いたアスファルトを駆ける規則的な靴音の合間に、日付が変わったことを告げる腕時計の電子音が鳴った。

 目前で、人通りのない路面を静かに照らす信号機の青い光が黄色に変わる。一瞬迷ったが交差点の手前で進むのをやめて、その場で足踏みしながら赤信号が変わるのを待った。赤は止まれ、だ。周囲を確かめるまでもなく、こんな夜更けに郊外の幹線道路を走る物好きな人間は花道の他にいない。だがもし誰も見ていなかったとしても、信号無視はスポーツマンの道義に反するというものだ。

 ここからさらに西へ、多摩川を渡って山間の住宅地へと続く道は、遅い仕事帰りの乗用車がごくたまに通るくらいで人どおりは少ない。長くて不快な梅雨がやっと終わって、今夜はさらりとした気持ちいい夜風が山の方から吹いている。このあたりは海から遠く、帰国からこっち滞在してもうひと月になる地元の町とはだいぶ雰囲気が違う。近くに公園か畑があるのか、信号待ちしながら耳を澄ますと聞こえてくるのは波の音ではなくかすかな虫の声で、静かな夜を独り占めしているみたいで楽しかった。その場で軽く足踏みを続けながら上半身のストレッチをして、自分の身体と対話するように緊張を少しずつほぐしていく。今日一日、あちこち遠出して知らず知らずのうちに神経を使っていたらしい。日本に帰ってきた花道がまず身に染みて思い出すことになったのは、自分がどこへ行ってもとにかく目立ってしまうことだった。アメリカなら珍しくなもない体格も、チームメイトに比べればむしろ地味なくらいの髪も、日本だとあからさまに避けられるには十分だということを久しく忘れていた。どこへ行っても他人の遠慮のない視線が絡みついてきた。子供のころから慣れっこだったが、かといって気にならないわけではなかった。知り合いと一緒の時はまだいいが、こうして一人で出歩くなら日が落ちて涼しくなった後、人目のない夜の方が何かと気が楽だ。

 今日は移籍先のチームと2度目の面会の日で、電車を乗り継いではるばる埼玉まで行ってきた。神奈川から日帰りできないこともなかったが、ちょうど翌日に赤木のところへ行く都合がついたので近場に宿をとることにしたのだ。一日中、長々と契約内容の説明を受けたり事務書類にサインしたり、その合間には偉い人や関係者に挨拶したりでへとへとになった。なにしろ花道には代理人やマネージャーがいないので、小難しい手続きの類も全部自分でやるしかない。在米中にこっちの移籍先を見つける時は赤木が相当骨を折ってくれたが、さすがに花道自身が日本に帰ってきてからは、赤木の手を煩わすわけにも行かなかった。(赤木からは付いて行こうかという申し出があったがさすがに断った。ありがたいが、昔からどうも必要以上に世話を焼きたがって困る。)昼間の慣れない雑務で、脳みその方はすっかり疲れ切っているのに身体はエネルギーを持て余している。昔から大事な試合の前後には興奮でうまく眠れないことがあったが、今日みたいな日は特に寝つきが悪くなる。20代前半くらいまではほとんど眠らなくても問題なかったが、最近はさすがに翌日に響くようになってきた。明日はただ遊びに行くわけではない。赤木の所属するチームの練習に邪魔させてもらうことになっているので、ちゃんと眠っておく必要がある。少し思案してそのまま寝付くのを諦めた花道は、身体を動かすために部屋を出た。

 駅前のビジネスホテルから軽く流すこと10分余り。信号が青に変わって再び走り出すと、ほどなく視線の先に河川敷が広がった。さっきフロントで見せてもらった地図によれば、この先の橋を渡ればもう隣の市になる。日本の町は狭い。狭い土地に家も人もぎっしりと密集していて、それが時々息苦しく感じる。昔は自分にとって小さいのが当然だと思っていたが、学校の机もホテルのベッドも電車のつり革も、自分のサイズに合っていなかったことに改めて気づいた。目の前を見回せば端から端まで見渡せてしまうコンパクトな街並みは、そのまま花道にこの国の窮屈さを連想させた。規格どおりであることが何より重要で、そうでない者ははじき出されるしかないことに気付いたのはいつ頃だっただろうか。彼方の記憶に沈みそうになる思考を振り切るようにして、一気にペースを上げながら堤防に向かって緩やかな上り坂を進めば、やがて両脇に広がる宅地が途切れて橋が現れた。星の見えない暗い空と川の間をまっすぐ伸びる道の頭上には、等間隔に並んだ街灯の光が点々と連なっている。多摩川を横断するその橋は真ん中が盛り上がったアーチ状になっていて、走っているとまるで空へ向かっていくようだ。滑走路みたいだなと思いながら、花道は先へ先へと進む。一定の間隔で道を照らすオレンジ色の街灯が、足元からアスファルトへいくつも長い影を伸ばして、足を運ぶのに合わせて後ろへ後ろへ流れていく。だんだんと心拍が上がって、身体の隅々まで熱い血が巡るのが心地いい。

 橋の中ほどを越えると、目の前に向こう岸の町が広がった。さっきまでと同じ低層のアパートや住居がみっしりと並んで、窓にはまばらに明かりが灯っている。それでもアメリカ郊外の閑散とした街並みに比べればずいぶん賑やかだ。花道と同じ時期に別の学校へ留学していた沢北は、ひどいホームシックになって頻繁に日本へ国際電話をかけていたそうだ。花道自身はプレップスクールで語学の壁に悩まされてはいたものの、寂しさのようなものをはっきりと感じたのは、寮の窓から遠く街明かりを眺める時くらいだった。市街地に出るのに何キロもバスに乗っていかなければならないような町はずれにある学校の周りには、どこまでも続く広い平地の州道沿いにぽつぽつと数件住宅の明かりが見えるきりで話し相手もなく、さすがに神奈川の仲間たちとの賑やかな日常が恋しくなった。ただそんな生活が大して苦にならなかったのは、感傷に浸る暇もないくらいバスケや勉強についていくのに必死だったのもあるが、はじめの半年ほどは宮城がそばにいてくれたおかげかもしれない。宮城は花道と同じ学校に籍を置き、花道が渡米したころには留学前にあれほど苦労していた英語もチームメイトとの会話に困らないくらい上達していた。花道や流川どころか、留学生としては先輩のはずの沢北のことまであれこれ気にかけ、向こうでは皆の兄貴分だった。帰国してプロ選手になった後も、時々なんの前触れもなく花道に国際電話をかけて来ては、とりとめのない雑談をした。宮城からは、そろそろ日本へ帰ってこないのかともそっちで頑張れとも言われたことはない。花道が逆の立場だったとしても多分何も言わなかっただろう。身ひとつで海外へバスケ留学することは、特にネットもメールもなかったあの頃、他人がどうこう言えるほど簡単なことではなかった。それもあって、この春日本への帰国を決めて以降赤木と連絡を取り合いながら準備を進める間も、宮城にはなんとなく言いそびれたままになっていた。洋平から突然届いたメッセージで宮城がこちらを気にかけてくれていることを知って、学生時代以来初めて花道の方から電話をかけた。
『よう問題児、やっと連絡してきたな』
 電話に出ると開口一番、遠く離れた母国から懐かしい声が聞こえて思わず目頭が熱くなった。スマンりょーちんと謝ると、『なぁんもぉ』と沖縄訛りのおおらかな返事が返ってきた。宮城は前の年から彼の故郷沖縄のチームでプレイしていて、この5月にはキャプテンとしてチームをプレーオフ優勝に導いたことを以前赤木から聞いた。電話口で宮城は、来シーズンから花道と同じリーグでやれることをものすごく喜んでくれた。その声を思い出すと、もうじき予定されているOB会で宮城に会えるのが待ち遠しくなった。関東に居るメンバーに加え、中部地方の三井、沖縄の宮城もOB会に合わせて帰省してくることになっている。

 身体が温まってきたので、手頃な公園でもあれば少しトレーニングして帰ろうかと周囲を見回しながら走っていくと、少し先にコンビニの明かりが目に入った。そういえば水分を持ってきていなかったことを思い出し、花道はペースを緩める。寝静まりつつある町で、夜通し営業を続けるコンビニだけは配送のトラックや近所の住人の姿が見え、人々の活動が続いている。入り口付近には、店内から漏れる白い明かりに照らされながら5、6人派手な格好の若者が座り込んでいて、花道が近づくとチラチラと視線をよこした。まだ高校生か、ひょっとすると中学生くらいに見えるやつもいる。
「…なああれ」
「うわでっか」
 多分自分のことを言っているのだろう、コンビニの入店チャイムの後から、嫌な感じの笑いを含んだ声が追いかけてくる。暇そうに、つまらなさそうに、そしてそれを隠すでもなくただ群れている。ああいう子供がどういう気持ちで夜更けに町をうろつくのか、花道は知らないわけではなかった。ポカリのペットボトルを買って出るとまた何か声をかけられたが、それを無視して再び走りはじめた。

 時代はずいぶん変わったが、その昔彼らと同じように道端に座り込んで道行く人々を威嚇したこともあった。何かがほんの少しずれていたら、自分の現在地は今とずいぶん違っていたかもしれない。もし15歳のあの春にバスケに出会わなかったなら、バスケットマンではない大人の自分がどんなか、花道にはうまく想像できない。ケガやリハビリの辛さも、留学先でのしんどいことも、きっと経験せずに済んだだろう。それは今よりずっと楽な生活だったかもしれない。けれどまだバスケに出会う前の花道は、周りのやつらと同じになれなくて、世界から愛されないことに窒息しそうな、ただの子供だった。灰色の毎日の中でもがき、同じような連中とつるんで、自分はここにいるぞと世界じゅうに喧嘩を売った。神奈川の、和光中校区の、小さな小さな世界の内側で、世界から何も期待されないまま。花道の仲間たちもそうだったのかは分からない。けれどあいつらと一緒に、お揃いの短い学ランと髪型で不良のしるしを世界に見せつけることが、あのころの花道にとっては確かな居場所であり、鎧だった。バスケ部に入って一緒に居る時間が減っても、花道が髪を切って坊主頭になってしまっても、あいつらがずっと変わらずそばにいてくれたことにどれだけ助けられたかわからない。ただの不良仲間だったはずなのに、不良をやめた花道を、あいつらは不良のままで応援しに来た。そのことは選手としてコート上で必要とされるのと同じくらい、自分はここで思うまま生きていていいんだと思わせてくれた。まわりに馴染めない花道の毎日を長い間覆ってきたどうにもならない息苦しさは、バスケに夢中になるうちにいつのまにか消えてしまっていた。

 その時、道路脇を走る花道の後ろから、ヘッドライトが前方を白く照らした。進路を邪魔しないよう注意しながらペースを変えずに走り続けたが、後ろから近付いてきているはずの車は数秒待ってもなかなか追い抜いていかない。花道が訝しく思ったのとほぼ同時に、白っぽい車体がすっと真横に並んだ。白地に黒のラインが入ったボンネット―――警察だ。車の窓は夜闇を映して中まで見えない。追い抜いていくでもなく、明らかにこちらの走る速さに合わせて並走している。何もやましいところがなくてもあまり気分のいいものではないが、昔の事を考えていたせいでなおさら反射的に身体が固くなった。が、目の前で半分ほど下がったパトカーの窓の中から聞こえてきた声は、想像していたものとは全然違った。

「そこのおにーさーん?ちょーっといいですかね」

 予想外に軽い調子の男の声に若干戸惑いながら、花道は立ち止まって指示に従う姿勢を示した。それを確認してから、パトカーはゆっくりと少し先の路肩に寄せてハザードを焚いて止まった。助手席のドアが開いて、制服姿の警官がひとり、かけ足で近寄って来る。50歳くらいだろうか、中年の男の警官だ。

「日本のひと?身分証、なにかお持ちですかね。免許証とか」
さっきの声とは違う。見上げる格好で花道の背丈と顔を無表情のまま一瞥してから、素早く手元に開いた手帳に視線を移してそう聞いた。
「あ、いや。あの」
とっさのことでうまく言葉が出てこないままボディバックの中身を思い出すが、小銭とケータイしか入ってないのはさっきコンビニで確認済みだ。

「今、手ぶらで」
緊張してんのか、何に。つばを飲み込む。
「パスポートが、ホテルにあります。車の免許は持ってないっす」
できるだけ正確に、敵意がないことが伝わるように、相手の目を見てそう答える。初対面で警戒されるのも疑われるのもよくあることだ。デカくてコワモテなんだから仕方がない。いつかの流川の言葉を借りるなら税金みてーなもんだ。アメリカなら目立たなくたって、ここは日本なんだから。
「じゃあ、名前教えてもらえる?」
警官はまたちらりと花道を見上げた。パスポートという言葉で相手の威圧感が増した。このナリじゃ疑われても仕方がない。でもだからといって、気分がいいわけではない。それは昔も今も同じだ。

「おにーさん、背ぇ高いね!」
 その時もうひとり、警官の背後から制服姿の男がひょっこりと現れた。中年とは対照的に笑顔を浮かべて花道を見上げている。さっき運転席から声をかけてきたのはこの若い警官だろう。まだ20歳かそこらに見える。「オレよりでかいやつ久々に見たわー」などと言いながら薄い身体をフラフラと揺らし、警察というよりさっきたむろしていた高校生に近い雰囲気だ。
「身体、すげーっすね。なんかやってんすか?」
「職業は?」
若い方の、職質というより雑談のような質問にかぶせるようにして、中年の方が尋ねる。
無職と言いかけて口ごもった。明らかにこちらを疑ってかかっている様子の警察官と目が合う。この状況で無職はどう考えても良くない。
「バスケットボール選手です、プロの。秋から埼玉のチームに入る予定になってます」
 花道がそう告げると、若い方は途端に相好を崩して中年の肩をばしばしと叩いた。
「ほらぁ、だから言ったじゃないすかスポーツ選手だって!走り方見りゃ分かるでしょ。空き巣の下見がこんなちゃんとした走り方しないっすよ」
「いや、わからねーし」
それまで事務的な無表情を貫いていた中年が、手を振り払いながらたまりかねたように小声で突っ込んだ。こちらの視線に気づいて、きまり悪そうにゴホンと咳払いする。続けてこんな夜中にランニングしている理由を聞かれてありのまま説明する間も、若い方は中年の後ろからニコニコと笑顔を向けてくる。

「…じゃあ、お名前いいですか」
「桜木花道っす。桜の木に、花が咲く道」
憮然とした様子で尋ねてきた中年にそう答えたとたん、若い方がまた横から声を弾ませた。
「うぉ~、めっちゃいい名前!一発で覚えたわ」
「そっすか。まあ、確かによく言われます」
「縁起いっすね。それにすげぇ似合ってると思う、なんか主人公っぽくてカッコいーってゆうか」
「お前ね、もう静かにしてろよ…」
勘弁してくれという様子で、中年は手元の手帳をわざと音を立てて閉じた。花道への職質は今や、ただの通りすがりの雑談に変わってしまった。
「この辺りそんなに治安よくないんでね、気を付けて早めに帰ってください。じゃ、ご協力ありがとうございました」
「っしたっ!」

 高校生みたいな挨拶をしてから中年についてパトカーへと戻りかけた若い方が、ふいに振り向いて言った。

「ほんとに気を付けてね。強そうなやつに集団で絡みに行くバカな半グレもいるからさ」
「…おう。そうなったら全力で走って逃げる。そんじょそこらの奴には負けん」
少し迷ってからそう答えると、若い方は花道を見上げてまたくしゃっと笑った。
「じゃ、バスケ頑張ってね。オレお兄さんのこと覚えとくよ」
おい行くぞと中年に呼ばれて、若い方は小走りに車へ戻っていった。少しは警察官らしくしろとかいう小言が聞こえるが、気にかける様子もなくそのまま運転席に乗り込む。
 花道をひとり夜道に残してそのパトカーは走り去っていった。周囲にはまた静寂が戻った。

 変な警官だった。そのへんの若いやつが警官の職業体験でもしてるみたいだ。ガキのころ何度警察のお世話になったか知れないが、あんなやつは一人もいなかった。いや、警官どころかだいたいの人間は、花道を見ると身体を強張らせた。だがあの若い警官は初めからこちらのことをかけらも疑っていないようだった。それどころか、社交辞令だろうが頑張れとまで言ってくれた。名前を覚えておくとも。頭の片隅でもいい、本当に覚えていてくれるだろうか。野球やサッカーに比べれば、プロバスケはテレビ放送もほとんどされないし、まだまだ露出の多いスポーツではない。それでも、プロでやっていくということは何かの形で、今の警官のように一瞬すれ違っただけの人の目にもいつか触れるかもしれないということだ。この先もしまた代表に選ばれるようなことがあるならなおさら。そういう可能性があるのなら、ここへ帰ってきた意味はあると花道は思う。

  *  

 翌日、花道は赤木の実業団チームの練習場所へと向かった。電車とバスを乗り継いで目的地に到着すると、門扉のところに作業着姿の大男が腕組をして待ち構えているのが見えた。同じくらいのサイズの自分が思うのもなんだが、となりの守衛室のドアがミニチュアに見えるのがおかしい。

「ゴリー!!」
 遠目からでも間違えようのない、花道よりひとまわりふたまわり上背のある男は、赤木剛憲その人に違いなかった。大声で名前を呼んでかけ寄ると、さっそく首根っこをひっつかまれた。
「バカモン!ひとの職場でその呼び方はやめんか」
周りを見回せばちょうど昼どきということもあり、作業着やスーツ姿の人々が物珍しそうにふたりを眺めていく。くそ暑い真昼間だというのに襟付きのシャツの上からグレーの作業服をきっちり着込んだ赤木はバツが悪そうに視線を泳がせているが、その表情は照れ隠しのようにも見える。厚意で招いてくれたゴリの社内の評判を悪くしてはいけないので、花道は最大限の愛想笑いで周りに会釈した。
「よく来たな桜木」
「おうよ」
 すぐに渋面を崩して花道を見おろした表情には、これまでのさまざまな思いが滲んでいるようだ。返事に困って「このたびは大変オセワになります」と言って下げた頭を、無言のまま大きな手でごしごしと撫でられて鼻の奥がツンとした。

 赤木の会社は電子機器を作る大手メーカーで、八王子周辺にある大きな生産拠点の敷地内に体育館とグラウンドを持っていた。不況と震災のあおりで日本の実業団では休廃部したところも多いと聞いていたが、このチームには活気があり設備や練習環境もなかなかのものだ。赤木がかけあってくれたおかげで、ここで2日間みっちり練習に参加させてもらえることになった。秋からの所属先とは何の関係もないチームだから、練習参加はあくまで内々にだ。ここのコーチとは以前代表で召集されたときの知り合いで、オフシーズンということもあって快く了承してくれたらしい。チーム内にも何人か顔見知りの選手がいて、リラックスして汗を流すことができた。盆明けからは本格的に移籍先での練習が始まるが、帰国からこれまでほとんど自主練しかできていなかったので、合流に向け久々のチーム練習に参加できるのはありがたかった。

 各自シュート練習とスリーメンをこなした後で、1on1の時間になると数人の若い選手が花道のところへ相手をしてもらいに来た。正直言うと久々にゴリとやってみたい気持ちはあったが、先輩としてひとつ胸を貸してやることにした。若いやつらが花道の動作のいちいちをキラキラした目で見てくるので、ついサービス精神を発揮してダンクを決めると、体育館じゅうから感嘆の声が上がった。2度目には派手なフェイクモーションもおまけした。

 攻守を交代しながら5人相手にしたところで、さすがに少し疲れを感じてコートサイドに戻ると、ドリンクを手渡してくれながら赤木が尋ねた。
「桜木、脚はもういいのか」
 練習でダンクなんかしてみせて大丈夫なのかと言いたいのだろう。調子に乗って無理するんじゃないというお小言の雰囲気が漂っている。
「問題ねぇよ、もうずいぶん前に制限しなくていいって言われてる」
 アキレス腱をやったのは3年ちょっと前だ。その前の大会に続き、アジア杯の代表に呼ばれた矢先だった。その年は、念願かなって赤木が初めて代表に召集された年でもあった。初めての大きな脚のケガによって、Dリーグでのシーズンの半分とともに、流川と赤木のふたりと一緒にコートに立てるチャンスも流れてしまった。日本代表としては過去最低の戦績で終わることになったアジア杯の結果をリハビリの最中に聞いて、花道はインターハイの夏のことを思い出していた。背中のケガさえなかったら、3回戦の愛和学園との試合の結果も違っていたかもしれない。全国制覇という目標にもっともっと近づけたかもしれない。あの時同様、自分はまた赤木を勝たせてやれなかったのだと花道は思った。いや、勝たせてやれなかっただけではない。一緒に負ける事さえ出来なかったのだということが、今もしこりとなって胸の内に残っている。バスケ選手としてはケガの少ない方だから、めぐり合わせが悪かったと言うほかないのは分かっている。ただ、赤木が日本代表に選ばれたのはその年が最初で最後になった。今年34歳になったベテランは、来シーズンを最後に引退を考えている。

「ドライブ上達したな。見違えたぞ」
 黙々と自分のトレーニングをやっているのかと思いきや、赤木は数年ぶりに間近で見る花道の動きをちゃんと観察していたらしい。「おうよ」と答え、花道はドリンクを一気に飲み干した。ゴリに褒められるのが照れくさくて、つい目線を逸らしてしまうのは昔からのクセだ。その横顔を伺って、赤木は苦笑しながら続けた。
「山王戦のビデオ、DVDに焼き直してまだうちにあるんだ。お前が帰って来るっていうんでこの前久々に見返してたんだが、お前、宮城のパスラインを邪魔して試合中に怒られてた」
「まだあるんか、あのビデオ」
「捨てられるわけなかろう」

 花道も何度か見たことのあるVHSの録画映像は無論、自分たちで撮影したものではない。インターハイの会場では部員たちにそんな余裕はなかったし、湘北高校にはビデオ撮影してくれるような応援もいなかった。当時の大会では、業者が全試合を録画したものを各校の研究用に販売していたのだが、関係者のみならず高校バスケファンの間で異常な人気を博した湘北対山王の一戦はすぐに入手困難となった。赤木が持っているのは、それを安西先生の人脈で1本譲りうけてダビングしたものだ。花道の分は、家にビデオデッキがなかったので、確か高宮の家に持って行ったままになっている。
「覚えてるぜ。あの時はまだフォーメーションの練習なんか全然やってなかったもんな。ゴリとリョーちんがその場でいろいろ指示出してくれたけど、ゴール下の位置取りもわかんなくてよ。我ながらよくあれでフル出場したもんだぜ」
「そのくせボール寄こせってアピールはすごかったがな」
 ぴょんぴょん飛び跳ねながらパスくれって叫んでるのがビデオにしっかり映されたと言って赤木がおかしそうに笑ったので、つられて笑った。バスケを始めたてで、ルールも知らない高校1年生の桜木花道。今になって振り返れば、なんて怖いもの知らずで、しかしそれゆえに健気でひたむきだったことだろう。
「今の方が圧倒的に技術も経験もあるけどよ、自信だけはあの頃が一番あった気がするぜ」
「それは俺だってそうだ。それくらいじゃないと、ああいうことはできん」

 あの勝利がなかったら、今の自分たちはここにいただろうか。バスケに出会ってしまった以上、結局回り道してでも同じところを目指していたようにも思うが、あの試合がその後の人生の方向を決め手しまった気がしてならない。赤木は懐かしそうに遠くを見ながら言葉を続けた。
「あの時のお前は粗削りにさえも程遠いが、間違いなく才能の塊だった。日本人離れしたジャンプ力も、体幹の強さと反射神経も。フィジカルだって負けてない。お前なら海外でも戦えるんじゃないかと思ってた」
「だな、オレもすぐNBA入ってやるって本気で思ってた」
もちろんドラフト1巡目でなと笑うと、赤木も頬を緩める。
「向こうでは結局、何年やってたんだ?」
「ローカルリーグとDリーグ合わせて6年だな。ケガであんま出てない年もあったけど」
そんなになるか、と赤木は遠くを見た。学生の頃も含めれば13年だ。長くて遠い旅だった。
「お前が代表でアジア杯に出た頃にも、すでにフィジカルとゴール下での成長ぶりはかなり評価されていた。だがここ何年かはそれだけじゃない。技術面が化けたと協会の方でも評判だ。俺もそう思う」
「向こうの試合見たことあるんか」
「ネットに動画が上がってるだろ。ちゃんと見てるぞ」

 日本代表として最後にプレイしたのは5年前のことだ。アメリカDリーグで一人前のPFとしてやっていけるだけのフィジカルとゴール下の競争力を身につけて挑んだつもりのアジア大会で、それだけではアメリカやヨーロッパ代表だけでなくアジア勢に勝つにも十分ではないことを思い知らされた。武器を増やそうと模索し、ようやく手ごたえをつかんだ頃に今度はケガに苦しめられたものの、徐々にプレータイムが伸びてきたのがこの2年ほどだ。
「ペイント内の判断やスペースの作り方も上手い。ボールしか見えてなかったのに、今じゃちゃんと周りを見て活かせてる。まったく、お前ってやつはどれだけ伸びしろがあるんだ」
 笑顔の中に、昔と違って赤木は羨望を隠そうとしなかった。だが今の花道にはその気持ちがよく分かる。ないものねだりは向こうで嫌と言うほどしてきたし、その先に道を見つけてここまでやってきたのだから。赤木も同じだろう。
「アメリカじゃオレよりデカくて身体の強いやつがゴロゴロいるからな。別のものがねぇと生き残れねぇ」
 ケンソンしているわけじゃない。そうするしかなかったのだ。持って生まれたものを愚直に磨き上げることで前に進んできた花道にとって、それはかつてない挑戦だった。以前に増してコーチやチームメイトに助言を乞い、上手い選手を観察した。学生の頃、流川楓の姿をひたすら目で追い、必死に技を盗み、自分を奮い立たせていたように。

「ゴリのほうこそ、だいぶ変わったんじゃねーか」
 シュートフォームをマネしてみせる。さっき横から見ていて、すぐに昔とは違うことに気付いた。肩で投げるクセが抜けて、シューターのように力が抜けた綺麗なフォームになっている。
「変わらないと生き残れなかったのは俺も同じだ。今の日本バスケではセンターはほぼ外国籍選手のポジションだからな」
「センター以外もやるのか?」
「ああ、最近は4番をやることの方が多い。遅まきながらストレッチフォーを目指してる。試合でスリーも打つぞ」
「マジか!後で勝負しろよ」
「いいぜ」

 3on3をやっていた選手が弾いたルーズボールがこちらへ飛んできた。赤木はそれを片手で受け止め、立ち上がって放り返してやった。
「あいつらの顔を見てみろ、いつもよりずっと張り切ってる。お前が13年アメリカでバスケをやって、日本に戻ってきた。それがあいつらにとってどれだけ価値のあることか分かるか?」
何も言えずに見上げていると、赤木はボールの行方を目で追ったまま言った。
「お前の道は若い奴の目標だ。ひいき目じゃないぞ。俺だってまだまだお前に期待してるんだからな」

  *  

 網の上の肉から滴った油がジュっと音をたててグリルの中に落ち、ひときわ大きくなった炎から香ばしい匂いが昇った。赤木がトングでカルビを端の方へ寄せながら、身体をかがめてテーブル下のツマミを回し火加減を調整した。花道はその向かい側でメニューを開き、一巡目の肉が焼ける前から次の肉を物色している。どれでも好きなのを好きなだけ頼めと言われて、とりあえず欲望のまま目につくものを頼んでから、シーズンオフのアスリートとして摂取していいラインを見定めている最中だ。赤木が練習終わりに花道を誘ったのは、会社から車で10分ほど走った国道沿いにあるちょっと上等の焼肉店だ。午後の練習を共にして打ち解けた赤木のチームメイトやコーチと食事に行きそうな流れだったが、今晩は先約があるのでふたりで抜けてきた。

「遅れてすまん!」
 ヒレと肩ロースとキムチ盛り合わせと豆腐サラダ、それから厚切りタン3種盛りに狙いを定めた花道が呼び出しボタンに手を伸ばしたちょうどそのとき、快活な声とともに個室の引き戸が開いた。
「桜木!元気そうだな」
 紺色のきっちりしたスラックスに半袖のワイシャツ姿で通勤カバンを提げて現れたのは、昔と変わらず眼鏡をかけた穏やかそうな風貌の男―――木暮公延だ。花道が座布団から立ち上がって歩み寄ると、木暮は両手で花道の肩を軽く抱いてぽんぽんと叩いた。
「久しぶりだなぁメガネ君!」
「ああ。何年ぶりだ?湘北イチの問題児がやっと帰ってきたな。嬉しいなぁ赤木」
「ふん、世話が焼けて困るわ」
「こんなこと言ってるが、世話できるの嬉しいくせにな」
「それはオレも知ってるぜ」
 赤木のげんこつから身をかわしつつ再びテーブルに着き、木暮のカバンを空いた席に置いてやる。掘りごたつ式のテーブルは、サイズの大きい男3人でぎゅうぎゅう詰めになった。木暮の後から現れた店員にあれこれと注文を取ってもらう。そうする間も赤木の手はてきぱきと肉をさばいていく。手伝おうとすると今日はお前が客なんだから黙って座ってろと言って聞かないのは、木暮の指摘の通りだと思う。

 ちょうど肉が焼けた頃合いでビールが揃って、木暮の「桜木、帰国おめでとう」の声で乾杯した。3人とも大ジョッキがひと息で半分ほどまで無くなって、オフシーズンはこれがたまんねーんだよなと笑顔を交わす。早速赤木が焼いてくれたカルビを1枚口に入れると、口の中を満たす肉汁と柔らかい食感、甘辛いタレの絡んだ脂の味に、思わず腹の底からんんんん…と声にならない呻きが漏れる。
「うんめぇ…!日本の肉やらけぇー!!」
 脂っこいものを日ごろ控えているのと、正直今は金銭的にあまり余裕があるわけではないので、こちらに帰ってからの自炊もスーパーの鶏肉や脂の少ない豚肉が多い。数年ぶりに食べる”良い牛肉”は大げさではなく眩暈がするくらい旨い。
「ほら、遠慮せずもっと食え」
「そうだぞ、こういう時でもないとなかなか食べられないだろ」
 赤木も木暮も次々に肉を焼いては食わせてくれるので、お言葉に甘えて後輩役に徹することにした。

 次々に肉や野菜を焼いては平らげつつ3人、それぞれの近況を報告しあった。木暮は一般受験で入学した赤木と同じ大学を卒業後、社会人バスケ随一の強豪である自動車メーカーで働いている。就職を期にプレーヤーからは引退したが、今も働きながらマネージャーとして部に所属しているらしい。赤木が会社員と選手の2足の草鞋なら、木暮はマネージャー業との兼業だ。そして木暮の所属する社会人チームのエースとして今も活躍を続けているのが流川楓だった。

「これから桜木に会うんだって言ったら、流川がよろしく言っといてくれってさ」
「キツネの野郎は変わりねーのか?」
「ああ、ケガもなく元気だよ。30過ぎても変わらずトップ選手だ」
「バスケはともかく、あいつが昼間は会社でスーツ着て仕事してるなんて信じらんねぇな。机で居眠りばっかりしてるんじゃねーか」
 そう腐してみせるとそれはあながち間違いでもなかったらしい。木暮は思うところがあるのか、苦笑しながら「本当ならあいつにはプロの方が向いてるんだろうな」とつぶやいた。

「桜木も、このシーズンはかなり良かったみたいじゃないか。Dリーグの記事、雑誌でいくつか読んだよ」
「…ああ、そうだな。今年は悪くなかったかもな。優秀な後輩でメガネ君もさぞ鼻が高かろう」
「はは、ほうぼうでありがたく自慢させてもらってるよ」
 実際4年前に花道がNBAの下部組織であるDリーグのチームに加入した時は、それなりのニュースになったそうだ。NBA選手候補生を取材しようと、日本の取材班がカメラマンを連れて現地にやって来たことも何度かあった。余談だが、バスケ雑誌の記者をやっている彩子から取材を受けたのもこの頃だ。だが1年目で目ぼしい結果が出ないままケガに見舞われ、半年ほどのブランクの後試合に出られない時期が続くと、国内からの注目度も次第に下火になっていった。その間、花道はひたすら練習に向かい、ステップアップするための課題を一つずつものにしながら、じっと次のチャンスを待った。大学時代にあっさりと憧れのアメリカから去った流川の判断は、何より試合でのプレイタイムを得るためには正しい選択だったかもしれない。

―――だから赤木から、桜木が帰国するって聞いたときは驚いたよ。もちろんこうしてまた会えてこんな嬉しいことはないけど、もしかするとお前はもう日本には戻ってこないのかもしれないと思ってた」
 木暮はトングで野菜をひっくり返す手元に視線を落としたまま、しみじみと言った。後輩をよく見てよく褒め、試合中はベンチから懸命に声掛けしてして味方を勇気づけてくれたこの男の言葉が、時々痛いくらいにまっすぐ届くことを花道は思い出した。
「…メガネ君の期待を裏切ってしまったかね」
 昔のように不遜に振る舞ったつもりの言葉が、思いがけずひねくれた響きになった。木暮はきょとんとした表情をして、それからふにゃっと眉を下げて困ったように笑う。
「まさか。お前はいつだって俺なんかの期待をはるかに超えていくよ」
「そんなことは…」
「桜木」
 顔を上げると、赤木と目が合った。あ、これは説教されるなと思って身構えると案の定、赤木は無言で網の上に乗っていた肉をすべて皿に取り上げてからトングを横に置いた。

「俺が今年で引退するつもりだっていう話はしたな」
「おう」
「お前だって年齢的にそう遠い話じゃない。それは分かるだろ」
「…おう」
「お前のことだからな。Dリーグのレベルでやれるなら、キャリアの最後まで日本でプレイするつもりなんか無いんじゃないかって俺たちは思ってた。今まで俺が国内の勧誘の話を持って行っても全くその気が無かったし、実際この2シーズンほどの成績を見ればまだまだ向こうでやれたはずだ。それが突然帰国する気になったのは、お前にも何か思うところがあるんだろ?」
「それは…」
「別に理由が何だっていいんだ。ただ、また間近でお前のバスケを見られるのが嬉しい。ささやかながらそのサポートができるのも。俺たちが言いたいのはそういうことだ」

 花道は網の底で赤く光る炭火を見つめて黙り込んだ。ごく最近、同じことを言われた。高校の頃、誰よりも近くで自分を応援し支えてくれた友達から。オレは今でもまだそれに値するような人間だろうか。バスケに魅了されて、ここまで無我夢中のまま走ってきた。地元どころか国を飛び出し、少しでもレベルの高いところでプレイするための道を選び続けた。地元のよすがも仲間との繋がりも日本に置いて。なのに結局目指したものに届かなかった自分を、花道は頭のどこかでまだ許せないでいた。帰国を決めたとき、なかなか洋平たちに伝える気になれなかったのはそのせいだった。

「桜木、実は俺な、少し前から試合で審判してるんだ」
赤木の話を黙って聞いていた木暮が、思い出したように言った。
「公式戦の?メガネ君がか?」
「ああ。始めは手伝いで始めたんだけどな。国内のライセンスも取った。知ってるか?レフェリーって、社会人が本業の片手間でやってるのが殆どなんだぜ」
「そうなのか」
 バスケ経験者がレフェリーに転向することがあるのは知っていたが、兼業というのは初耳だ。横から赤木が口を挟む。
「俺も何度も担当してもらってる。木暮のジャッジは冷静で公平だし、必要なら毅然とした対応もできる。こいつは審判向きだ」
 それでな、と木暮は生き生きとした顔で言葉を続けた。
「もうじきA級ライセンスの試験があってさ。それに受かればプロリーグの審判もできるようになるし、そこから経験を積めば国際試合にだって出られる」
「それって、オレの試合の笛をメガネ君が吹くかもしれねーってことか!すげぇな」
 高校のころ、練習でよく審判役をしてくれた木暮が、観客の入る試合で笛を吹いている姿を想像するだけで胸が高鳴った。声を上ずらせる花道を見て、木暮はにっこり笑う。
「今、不況で実業団チームがどんどん無くなってる。実はうちのチームにも休部の噂があるんだ」
 驚いて赤木の方を見ると、赤木も神妙な顔でジョッキを傾けながら言った。
「俺のとこもまぁ、似たようなもんだ。この10年、俺たちが入ったころからずっとそうだ。企業バスケは多分、もう先行きがない。かといってプロは選手の年俸も低いし、今のところ興行もイマイチふるわない。プロリーグをもっと大きくしていかねばならんのだろうな」
「流川もそろそろ身の振り方を考えてるみたいだ。良かったら連絡してやれよ」
意地張らずにさ、と木暮は笑って、ジョッキに残ったビールを飲み干し息を吐いた。
「業界はこんなだし、俺はプレイヤーとしてトップには立てなかったけどさ。それでもこうしてバスケに関わり続けることはできる。俺のひそかな目標はな、お前や流川の出場する国際試合で一緒にコートに立つことなんだ」
だから、と木暮はまっすぐ花道の目を見た。
「俺はな、桜木。それまでお前に走り続けていてほしいんだ。期待してるぞ、天才」

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